なんとか金曜更新に間に合わせました~っ!
まずは滞っていたお題の更新を。
そして、拍手はいつもの連作な感じです。
テーマは雨にしてみました。
おまけもざっとまとめました^^;
近況ですが……。
相変わらず新刊類、読めてません……っ!
くっ……;;
で、5月31日は世界禁煙デーらしいんです。
知りませんでした!
なので今回のテーマは(以前にも書きましたが)煙草で!
□つづき□
「はあああぁぁぁぁ~~~~~」
潮が、大げさな身振りで目の前に置かれた小石を《力》で動かそうとしている。
声を出せばいいってものでもないのだが、あんまり言ってもアレなので放っておいた。
他にも数人、新入りの隊士たちが《力》の訓練を夢中になってやっている。
高耶もやるように言われてはいるが、お目付役の隊士がいないのをいいことに、新入りの輪から外れてそれを眺めていた。
遠い昔、千秋のアパートで似たようなことをやらされた記憶がある。
懐かしく思いつつも、付随して色々なことを思い出してしまい、気が重くなった。
「寒い中ようやりゆう……」
気がつくと、すぐ隣に嶺次郎が銜え煙草で立っていた。
久しく嗅いでいなかった匂いに、やはり昔の記憶が刺激される。
昔はよく、隠れて吸ったものだ。
「くれよ」
そう言うと、嶺次郎はおっという顔をした。
「草間さんにはクサいちゅうて嫌がられちょる」
仲間が出来たとばかりに、嬉しそうに差し出してきた。
「───……」
肺の中に煙を吸い込むと、久しぶりの煙草はやはり懐かしい味がした。
□ □ □
「ここは禁煙です」
額に怒りマークをつけながら、中川は言った。
「医務室でタバコを吸うなんて、どうかしてますよ!」
怪我の手当てにやってきた直江は、中川がいないのをいいことに一服してたところだったのだ。
「引火したら危険な薬品だってあるのに!」
どんなに怒っても眉を上げるだけの直江に、中川あきれた声を出した。
「聞いてます?」
ところが直江はどこ吹く風で、
「彼はどうしてる」
などと聞いてきた。
包帯を変えて欲しいとかなんとか言いながら、結局高耶の様子を聞きたいだけなのだ。
「…………はぁ」
大きくため息をつきながら、中川は出来る限り詳しく、高耶の様子を話してやった。
□ □ □
卯太郎と楢崎が、建物裏でなにかこそこそとやっている。
「買ってきたぜ」
「わしは吸わない言っちゅうが~」
「いいから、ほら」
「げほっげほっげほっ」
「やっぱお子様には早かったかあ」
「ううぅ、にがいぃ……」
「げっ!!誰か来るッッ!!」
慌てて火を消して隠してはみたものの、たぶん匂いですぐにばれてしまうだろう。
やがて現れたのは、ふたりが尊敬してやまない仰木高耶だった。
「おうぎさん……」
「なにやってる」
「ち、違うんですって、これは……」
言い訳をするふたりを、仰木隊長は懐かしいものでも見るような目だ。
「………ほどほどにな」
結局、それだけ言って去っていった。
「仰木さんてば、あきれちょった……」
「バカ。あの人、根性焼きの跡があんだろ。あれで元ヤンだぜ」
「もとやん……?」
「今度、アニキって呼んでみようかなあ」
そう呟く楢崎に、
「あにき……?」
卯太郎は更に疑問顔になった。
□ □ □
高耶が会うなり、左胸に触れてきた。
一瞬どきりとしたが、勝手に内ポケットからタバコを取り出される。
「中川に怒られますよ」
あの男はタバコのにおいに敏感です、と実感を込めて言うと、高耶は笑った。
「怒られてんのか」
「ええ、いつも」
「まるで先公だな」
煙草を燻らせる高耶の仕草は、なんだかとても懐かしい。
「おいしいですか」
そう聞くと、何を思ったのか高耶は、
「おまえの味だ」
と、言った。
「───……?」
具体的にどこのだろう、などと考えていたらすぐに返事が出来なくて、妙な間が生まれてしまう。
「で、おいしいんですか?」
「………知るかよ」
向こうを向いてしまった高耶の頬は、少し赤く見えた。
しばらく経ってから。
「別にまずくはねーよ」
と、フォローしてくれた。
「……どうも」
相変わらずそっぽを向いたままの高耶に、直江は苦笑いを浮かべた。