お題「亡命者」を更新しました。
なんとか、FTPSの壁も乗り越えました^^;
そして、ものすごく私事で恐縮なのですが、
つい先日、衝撃的な出来事が……。
実は、誕生日を迎えまして、
2 8 歳 になりました!!
よっくんと同い年!!
その響きに号泣です。
ついにここまで来てしまった……。
橘さん!いや、あえて橘くん!
あなたの5年間にあやかって、わたしもがんばるよ!
でもでも同級生の男の子なんて、いまだにガキんちょなんですけど><
よっくん、かなり浮いてただろうなあ……。
ではでは、今回のおまけは赤鯨衆設定で!
□つづき□
夜だというのに、外が何だか騒がしい。
気になった直江が覗きに行ってみると、隊士たちが丸座になって宴会をしていた。
その中に見慣れない顔がいる。
これまた随分と若く、高校のものらしき制服を着ている。
「新入りか?」
近くに座っている隊士に尋ねると、裏の学校でふらふらしてたやつ(霊)を連れてきた、とのことだ。
「憑坐は?」
「それもその学校にいよった奴じゃ」
「……………」
それじゃあ誘拐だろう、と思っていると、
「あいつ、若い内にのうなったき、酒も飲みよったことがない言うんじゃ」
隣にいた隊士が何だか言い訳がましいことを言ってきた。
ただそれを口実にして、単に酒盛りがしたかっただけではないかと疑いたくなる。
□ □ □
その後、それとなく警察に確認を取ってみたところ、憑坐にについての誘拐や失踪の届出は出されていないようだった。
茶色い髪にわざと焼いた肌で、おとなしくて真面目な子といった感じではないから、家に戻らなくてもあまり心配する人がいないのかもしれない。
「地縛霊?」
高耶に話をしてみたら、意外にも食いついてきた。
「裏の学校で自殺した生徒だそうで」
ということは、中身はまだ中学生ということになる。
「入隊するのか」
「さあ、どうでしょう。気になります?」
「……明日、会ってみる」
□ □ □
またしても外が騒がしくて覗きに行ってみると、昨晩の酒盛り組と高耶が口論をしていた。
寄って行ってしばらく様子を見ていたら、じきに事情が飲み込めた。
どうやら、この世に未練なんか無いと言い切った少年に、高耶が入隊を認めない、と言ったらしい。
「こいつのご先祖さんは郷士の出やったそうじゃ!」
「敵の捕虜は仲間にするくせに……」
「なんで駄目なんちや!」
一晩で少年と随分仲良くなったらしい隊士たちは、高耶に不満を訴える。
それを高耶は一蹴した。
「赤鯨衆隊士は心に資格を持つ。そう決めたのは誰だ?」
「嘉田さんじゃ……」
「この世に残って闘う気なんて更々無いと言い切る人間が、ここにいてもいいと思うのか?」
「……………」
シュンとした一同を見回して、高耶は大きくため息をついた。
そして、終始うつむき気味だった少年に眼を向ける。
「その憑坐の人生を奪って生きていくだけの想いがないのなら、あの男に着いて行け」
突然、直江は指を指された。
けれど、驚きはしない。
高耶の意図はよく分かっている。
「……着いていって、僕はどうなるんだ」
高耶はその質問には答えずに、
「まずは、その憑坐を家に帰す」
と答えた。
□ □ □
直江がまわしてきた車に、高耶は乗り込まなかった。
少年だけを乗せると、後は任せるとばかりに発進を指示する。
直江はまず、少年の携帯していた身分証の住所へと車へ向けた。
「この身体から離れたら、僕はどうなるの?」
やっぱりそこが気になるらしく、少年は幼い口調で尋ねてきた。
先ほど高耶は言わなかったけれど、教えてやらねばならない。
「おまえは《調伏》される。つまり、浄化するんだ」
「浄化……」
「いつかまた生まれ変わるために、あの世へと行く」
ふうんと、軽い風を装って返事をしながら少年の握る手に力が込められた。
「怖いか」
「……別に」
少年は冷たい瞳で言う。
「この世界の方が……生きていくことの方が怖い。だから飛び降りたんだ」
「……………」
子供の自殺が増えているとは聞いているが、実際目の前にすると何て言ってやればいいのかわからない。
生きていればいいこともあったろう、と言ってしまっていいものだろうか。
そもそも日本では昔から、自死による意思表示を尊ぶ傾向にある。
そういえばかつて、自分も散々自傷を繰り返していたものだ。
「でも」
しばらく経ってから、少年はぽつりと呟いた。
「生きてるうちにあんな仲間が出来てれば、死んだりしなかったかも」
■ ■ ■
「そうか。そんなことを……」
「もう少しここで過ごしていたら、入隊していた可能性もありましたね」
「早まったと言いたいのか」
「いいえ。少なくとも、ひとりの憑坐が救われました」
ベッドに横たわり、直江の腕に身体を預けて首を傾げていた高耶は、やがて口を開いた。
「この世に残るのに、憑坐が必要なかったら?」
「───もちろん、霊体でも残れますが……。それがどういうことか、あなたも知っているでしょう?」
「そうじゃなくて。もし霊体でも、身体があるように振舞えたら?」
《力》が強い霊などは、宿体がなくても変わりなく振舞えることもある。
「どうでしょう……。ただ、霊体では飲食もできなければ、眠ることもありません」
直江は、それに、と付け足した。
「愛するひとに触れることもできない」
直江は、高耶を抱く腕に力を込めた。
「いずれ、宿体が欲しくなるでしょうね」
「そうかもな」
直江の腕の、心地の良い圧迫感に身を任せながら、だけど……と高耶は考える。
肉体の求めるものは満たしてやれなくても、心の欲求だけは汲み取ってやりたい。
無理やり浄化させるのではなく、きちんと納得してこの世を旅立っていって欲しい。
それだけであれば、肉体がなくとも出来るはずだ。
自分はこの身体を手放せないのに、そう思うのはずるいだろうか。
自分が出来ないことを人に求めるのは、罪深いことなのだろうか。
「オレは………おまえに触れられなくなったら、きっと気が狂う」
「高耶さん」
直江が首筋に顔を摺り寄せてきて、
「───……」
高耶はゆっくりと目を閉じた。
ほんとは潮くんとか隼人くんとか出したかったんですが、
長くなりそうだったので^^;