連載「白銀の翼」05、06、
お題「色彩形容詞」「嗜好」を更新しました。
未完成短編の後編、完成せず……っ!
おまけばっかり書いてるせいです。
面目ないです……。
だからお題の更新を多くしてみたり……。
松本空港は、案の定行ったことありません!
そして、今回はちょっと……いやかなり、
個人的嗜好が色濃いです……。
□つづき□
「景虎様……」
そう呼びかけると、すっかり陶酔しきっていた高耶は一瞬我に帰ったような顔をして首を振った。
情事の時にはあまり呼ばれることのない名に、違和感を覚えたようだ。
「その名前で呼ぶな───ッンンッ!」
構わずに更に腰をたたきつけると、悲鳴を上げながら睨みつけてくる。
虎の瞳。
「……そんな眼でみても駄目。余計に燃えるだけですよ」
直江が眼を細めると、高耶は侮蔑の笑みを浮かべた。
「ヘンタイ」
「……あなたもね、景虎様」
「ッ──……!」
その後直江がその名を呼ぶ度に、高耶の悲鳴は一段と高くなった。
□ □ □
今回伊達方に仕掛けたかなり大規模な作戦は、かなり厳しいといわれていた
当初の予測どおり、とてもシビアなものとなった。
かろうじて勝利できただけでも大収穫だ。
けれども数の少ない医療班の面々にとっては、戦闘終了後こそが本番と言えた。
先程から中川は、会議室を急ごしらえの医務室として、横たわる隊士たちの間を、
忙しそうに走り回っている。
「すみません、おまたせしちゃって」
「いや」
大量の怪我人が出た際は、幹部陣といえども傷の具合によっては後回しにされる。
軽傷だったため、先に事後処理を済ませてきたらしい兵頭、高耶、橘の三人は
その並び順のままやっと手当てを受けることとなった。
「うわっ、コレはひどすぎです」
兵頭のぱっくりとあいた傷口の消毒にてこずっていると、
手当てを待つふたりの様子が自然と目に入ってきた。
何かに気付いたようすの高耶が傍らの橘に耳打ちしたりして、
笑いあっている。
そのうち、橘が高耶の手の甲に視線をとめた。
切り傷ができているのに気付いたようだ。
橘は、その傷口に滲んだ血を吸い取るようにして口付けた。
「!!!」
その様子があまりにも自然で、高耶も別段騒いだりしなかったから、
周囲の人間は誰も気付かなかったようだが。
「どうした」
ひとり赤面する中川に、兵頭が怪訝そうに声をかけてきた。
□ □ □
八十八ヶ所の寺社は観光地でもある。
その中のひとつの寺の境内を、ツアー客の足元を縫うようにして歩く小さな男の子がいた。
「ママぁ〜〜っ!」
どうやら迷子のようだ。心配になった周囲の大人たちが声をかけても、泣き叫ぶばかりで受け答えが出来ない。
「ぼうや、大丈夫かな?」
膝を折り、顔の高さを一緒にして精一杯の社交スマイルを浮かべる直江に、男の子はやっと目を合わせた。
「お兄さんと一緒にお母さん探そうか」
直江の言葉にこくんとうなずく。
抱き上げた直江があたりを見回していると、直江の背の高さがよかったのか、じきに母親が半泣きでやってきた。
「まーくんっ!」
「ママぁ〜」
母子はひしと抱き合った。
「物騒な世の中ですから、ぼうやの手を離さないように」
優しく諭すように直江が言うと、若い母親はハイッと頬を赤くし、お礼を言いながら慌しく去っていった。
ツアー客らもよかったよかったと安堵の声をあげながら、散り散りになる。
残された直江が後ろにいたはずの高耶を振り返ると、何故か真っ赤な顔で立っていた。
"ぼうや"という言葉で何かを連想したに違いない。
「かわいい"ぼうや"でしたね」
わざとらしく直江が言うと、高耶は動揺を隠すようにくるりと背を向けて言った。
「おまえ、そろそろ自分をお兄さん呼わばりすんの、考えたほうがいいんじゃないのか」
ピクリと眉を上げた直江はいきなり高耶の背後から襲いかかった。
「なっ!なにするんだよっ!」
「……かわいいぼうやだ」
直江が遠慮なしに"ぼうや"を鷲掴みにするから、高耶は悲鳴をあげた。
□ □ □
外ですよ〜〜っ!と言いたい!自分に!
直江は絶対自分をおじちゃんとは呼ばないと思う……。
高耶さんの切り傷は首筋とかほっぺとか好みの場所に変換して読んで頂きたいですが、
ちょっと甘すぎたでしょうか……?
そして!ここから以下は「パンツ」と「黒子」をテーマに妄想したものです。
「需要はある」と勇気付けてもらったので、アップに踏み切ります!
□ □ □
「たっ、高耶さん!」
「ああ、わりぃ、風呂入ってた。今、美弥いねーんだわ。ちょっとあがってて」
高耶の家まで迎えにやってきた直江を出迎えたのは、髪から水を滴らせ、タオル一枚を腰に巻いただけの高耶だった。
「いえ、外で………」
待っている、と言おうとしたのに、高耶はうろたえる直江には構わず、さっさと家の中へ入っていく。
仕方なく後についてお邪魔した。
すると。
「風呂場にいて呼び鈴なるとドキっとしねえ?宅配便とかだったら出れねーよな。お前でよかったよ」
高耶はしゃべりながらタオルを取り去り、直江の目の前で下着を履き出した。
「!!!」
一応直江に背を向けてはいるものの、滑らかに引き締まった双丘が視界に入って、直江は慌てて視線を逸らす。
本当は凝視したいところだが、してしまったら自分で自分がどうなってしまうかがわからないからやめておく。
「ひとり暮らししてるやつとかって、どーしてんのかね。……直江?」
「は、はい?さあ、どうしてるんでしょう?」
「そっか、お前も実家だもんな」
何とか高耶の下半身から目を逸らす。
いや、上半身も出来れば見ないほうがいい。
けど、首筋に比べて胸やお腹のあたりは若干色が白いんだな、などと考えてしまう。
イヤな汗が全身から吹き出してきた。
「あれ、何か顔色おかしくねえ?熱でもあんじゃねーの」
わざとじゃないかと思うくらいに身体を近づけてくる高耶からシャンプーらしき香りが漂ってきて、必死で後退りする。
「だ、大丈夫ですよ。全くなんともありません。ほら、早く服を着てください。風邪引きますよ」
そうか?と高耶は首を傾げてから干してある洗濯物を漁り始めた。
「もうすぐ夏だぜ?さすがに風邪はひかねーだろ」
高耶は笑いながらTシャツに袖を通している。
普段なら天使のものに見えるその笑顔が、今日は悪魔のものにみえた。
□ □ □
朝早く目が覚めてしまった卯太郎は、着替えを手に廊下を走っていた。
(この時間ならゆっくり風呂にも入れるき!)
ここのアジトは食堂と同様風呂も24時間営業なのだ。
浴場は、夕飯時の前後なんかはそれこそ芋を洗うようになるから、なかなかゆっくり湯船につかることもできない。
大浴場の暖簾をくぐると、こんな時間にもかかわらず脱衣所には先客がいた。
「橘さん!おはようございます」
「……随分早いんだな」
ちょうど浴場から出てきたところで、まだ服を着ていない。
橘の裸を見るのは初めてで、その傷跡の多さにどきっとした。
卯太郎は服を脱ぎながら、下着を身につける橘を横目でちらちらと伺う。
(おおぅ!)
内心、声を上げた。
潜入工作か何かの帰りなのか、脱衣籠に入れられていたのはグレーのスーツにYシャツだったが、下着の色が黒だったのである。
「さすが、黒き神官じゃ……」
「?」
思わず心の声を口にしてしまった卯太郎に、橘は怪訝な顔をした。
□ □ □
「げ」
嶺次郎の部屋へシャワーを浴びに来たら、替えの下着を忘れてしまった。
まあ、部屋に戻るまでの間だし、ということでそのまま直にジーンズを履くことにする。
微妙な開放感を心地悪く感じながら部屋を出ると、隊長、と声をかけてくる者がいた。
「兵頭」
その場で次の作戦がどうとか話し込んでいるうちに、また別の隊士がやってくる。
そうこうしていたら、下着のことなんてすっかり忘れてしまい、結局そのまま軍議へと向かってしまった。
「仰木さん」
軍議を終えてもまだ会議室で話し込んでいると、中川がカバンを持ってやってきた。
「今からちょっと出てしまうので、その前に例の傷、見せてください」
「ここでか?」
「ええ、しばらく戻れないかもしれないので見ておきたいんです」
いいけど、と言いかけて、ハッと気付く。
実は先の戦闘で、高耶は左の内腿を負傷した。
おかげで直江には散々そこを責められているのだが、まあ、それはいい。
問題は、下着を履いていないことだ。
会議室にはまだまだ隊士たちがたくさん居残っている。
これだけの人数の前でパンツ一丁ならともかく、フル○ンはまずくないか?
「あー…、そういえばオレ、ちょっと用事を思い出したようなー……」
別にいいのだ。さっきシャワーを浴びたとき替えの下着を忘れたから実はいまノーパンなんです、とすっかり言ってしまえばいい。けれどなんだかそれでは変な誤解をされるような気がして、とっさに言い訳がましい事が口をついて出てしまった。
「何を言ってるんですか。ほら、早く」
こうなってくると、なかなか本当のことが言い出せない。会議室中の人間がこっちを見ているような錯覚に陥る。
事実、隊士たちは全員高耶に注目していた。そりゃあそうだ。天下の仰木高耶の下着姿が見られるというのだから。
と、そこへ天からの助け舟が現れた。
「隊長」
「なお……橘」
突然直江に声をかけられて、小さなパニック状態だった高耶は思わず素で返事をしかけてしまう。
「緊急事態です。すぐ来てください」
切羽詰った表情で言われて、内心ホッとしながら返事をする。
「わかった。悪いな、中川」
「あ、仰木さん……!」
呼び止める中川を置いて、高耶は颯爽と去っていった。
残された隊士たちの間には無念の吐息が漏れる。
高耶のほうは、会議室を出て早足の直江とともに並んで歩き始めていた。
「んで、緊急事態って何だ?」
「……嘘ですよ」
「は?……いてっ……!」
腕をぐいと掴まれて近くの部屋へと連れ込まれた。部品倉庫のようだ。
「下着、履いてないんでしょう?」
壁際に追い詰められながら言い当てられて、思わず怪訝な表情になる。
こいつ、シャワー室を覗いていたのか?
「ラインでわかります」
直江はそう言って、高耶の尻を撫でた。
この男は観察眼はいったいどうなっているのかと、高耶は悪い意味で驚愕しながら、その手を振り払う。
「よせよ」
「どうして履いていないんです?理由によっては……容赦しませんよ」
どんな妄想をしているのかはわからないが、直江の眼は真剣だ。
「なんでもねーよ。ただシャワー浴びたときに替えの下着を忘れたんだ」
「本当ですか」
「ああ」
高耶はため息を吐いた。
こんなことでくだらないことで議論なんてしたくない。
「わかりました。今回は信じます。まあ、脱ぐ手間も省けますしね」
「ちょ……っ…………………あ」
ああ、やっぱり天からの助け舟などではなく、肉欲の国から来た絶倫皇子だったのだ。
あっという間にジーンズを下ろし、直江の手は不穏に動き出す。
それに翻弄されながら高耶は、どうせ下着を脱がせる手間なんて、手間のうちに数えてないだろ、と心の内で毒づいた。
□ □ □
「なっ、なおえっっ!!」
高耶が悲鳴をあげた。
「なっなっなっ、なんだそれっっ!!」
下着のことをいっている。
前側には辛うじて隠れる程度の布、後ろ側にはまったく布がなく、尻が丸出しだ。
「ああ、現在支給できる黒の下着はこれしかないというもので」
(そ、そこまでして黒がいいのか……っ!?)
驚愕のあまりよろめく高耶に、直江はなんでもないことのように言ってのける。
「意外と便利ですよ、これ。ほら、すぐ出せます」
「いーって!だしてみせなくてもっ!」
「気に入りましたか」
「んなわけねーだろーがっ!!」
「じゃあ今日は脱がずにしましょうね」
いつもながら会話になっていない。
直江は、にっこりと微笑んでいる。
□ □ □
「あ」
これからってところで直江のケイタイが鳴り、無視しようとする直江を叱って電話を取らせた。
直江は今、ベッドに腰掛けながら小源太らしき相手と口論中だ。
その直江の脇腹あたりに、ほくろを見つけたから、思わず声を出してしまった。
直江の、そのモノのカタチやら何やらは網膜に焼きついているが、それ以外の場所となると案外知らないことも多かったりする。
高耶はいたずら心が抑えきれず、そのほくろにかぷりと噛み付いた。
「───!」
『何じゃ、どうした?』
「……なんでもない。もう切る」
『へ?あ、おい!ちょっと、たちば』
ケイタイを電源ごと落とした直江が、高耶に覆い被さってくる。
「待ちきれなくなったんですか」
「……知らないほくろがあったんだ」
「ほくろ?」
「そう」
直江の左手が内腿に進入してきた。
「あなたの身体には私の知らないほくろなんてありませんよ」
「ほんとかよ」
「ええ」
直江が笑みを浮かべる。
「じゃあ今夜は、あなたのほくろの場所をぜんぶ教えてあげる」
まずはココ、と直江は高耶の首筋に噛み付いた。