「悔恨の小祠」33、34を更新しました。
なんとか完結です。うへへ。
友人は、紅しょうがは嫌いなくせに、しょうが焼きは大好物なのです。
高耶さんも、しょうが焼きは好きそう……。
あと、白いアネモネの花ことばに"真実の心"はないです。
勝手に創っちゃいました!
そして、今回も……。
□つづき□
毎日じめじめと蒸し暑い。
橘不動産の明るい店舗内は空調が行き届いているはずだったが、
それでも事務の女性から物件の説明を受けている中年男性の額には汗が光っていた。
本来あまり汗はかかない体質の直江ですら、
シャツがじっとりと湿ってくる気がして気持ちが悪い。
手にしていた書類を机の上に戻して席を立つと、
大きな通りに面した全面ガラス張りのウィンドウ越しに外を覗き込んだ。
ブラインドがしてあっても、午後に入ったばかりの日差しはとても眩しい。
(彼は今頃、何をしているだろう)
あの、生意気ではねっかえりで過去の記憶をすっかり失ってしまった高校生は、
たぶん教室で何かの授業を受けているか、もしかしたらもうお昼休みかもしれない。
松本はきっと、ここほど暑くはないはずだ。
日常の、ふとした拍子に彼のことを思い出すと、そのまま何時間でも物思いに耽ってしまいそうになる。
直江は大きく息を吸って、無際限の妄想を頭から追い出した。
ブラインドの操作棒を手に取り、光が入るよう調節されていた隙間を完全に遮断する。
これで少しは店の中も涼しくなるだろう。
「あの、すいません。この物件のことなんですけど……」
暑さのせいか少し頬を赤くして、随分と遠慮がちに学生らしき女の子が声を掛けてきた。
「はい、何でしょう」
直江は営業スマイルを浮かべて彼女に向き直ると、脳内を仕事モードに切り替えた。
と、ゆうことで、不動産屋さんのよっくんです。
女学生は直江に声を掛けるタイミングをずっと計っていたという裏設定♪