連載「uncommon life」11、12を更新しました。
レイアウトもちょこっとだけいじったりしてます。
それからバレンタイン企画ということで、
「endless richness」を今日から三日間更新します。
ミラとはなんの関係もありませんが、
やっと、やっと、念願だった"キム・サムスン"を数話と、
X-MENオリジンズを観ましたっ!
ダニエル・ヘニー……。奇跡のかっこよさ!
あとこれも全く関係ないのですが、
最近、東地さんの声を日に三回は聞くんですけども!
私がTVをつけてるのは大抵夜なので、
たまたま多い時間帯なのかなあと思っていたら、
このあいだ朝の時間帯でも聞いちゃいました。
たぶん「ダブルソフト」って言ってました。
もう、のぞみちゃんかこども店長か東地さんか、って感じじゃないですか!?
それとも単に私が好きだから、耳に残りやすいだけなのかなあ?
ではでは、今回はねーさん特集です。
□つづき□
昔から、規律と規範がモットーの男だった。
自分で決めたルールを忠実に守る。
使命第一、黒を纏う、宿体の肉親を大切にする。
その他細々としたルールが数多くあった。
が、時折その全てを無視して暴走する。
そういう時、改めて気づかされたものだ。
作られたルールは全て、その暴走を防ぐためのものだったのだと。
直江が自殺を図った。
しかも初めてのことではないらしい。
色部から連絡を受けて、綾子は直江の入院する病院へと向かった。
が、まだ小学生にあがったばかりの綾子がひとりで訪れられる訳はなく、色部に手を引かれてやってきている。
面会謝絶のプレートが掲げられた病室の扉の前には、疲れきった表情の女性とその夫らしき男性が座っていた。
ふたりの隣に立っていた若者が色部と綾子に気付いて、女性の方に声をかける。
「佐々木と申します」
色部が挨拶を始める横で、綾子は病室の大きな扉に対峙した。
ドアノブに手をかけると、背後から制止する声が聞こえたが、構わずそのまま扉を開けた。
病室へ入ると、ひとつだけある窓のカーテンが開けっ放しで、月の光が部屋の隅々まで照らしていた。
そうっとベッドに近寄ると、青白い顔でベッドに横たわる少年がいる。
白い手に両手でそっと触れた。
その手は、ひどく冷たい。
「なおえ」
声をかけると、うっすらと瞳が開かれた。
しばらくさまよった視線が綾子を捉える。
「───晴家?」
今生では、これが初対面となる。
綾子はこくりと頷いた。
「………すまない」
直江の眦から、透明な液体が一筋つたった。
何も言うことがなくて、ただ首を横に振った。
自分達は自殺を図ったところで死ねるわけじゃない。
それでも自傷せずにはいられない直江の心情は、察するに余りあるものがある。
景虎の行方を聞かされてから数ヶ月、自分はずっと立ち直れずにいたが、直江はもう何年もそのことで苦しんできたのだ。
直江の為にも、自分ががんばらないといけない。
「からだはだいじにして」
触れた手に力をぎゅっと込めた。
「せっかく、わたしごのみなんだから」
無理やり笑顔を浮かべていうと、直江も疲れ切った笑みを見せた。
□ □ □
カップルを装ってとある公園のベンチで張り込み中の直江と綾子だったが、
あまりにも対象に動きがない為、綾子はすっかり怠慢モードに突入していた。
「ねー、寒いしもう帰りましょーよー」
「何を言ってる。日付が変わるまでは粘ると言っておいただろう」
「ええ!?あと1時間以上あるじゃない!?……じゃあ、ちょっとコンビニで雑誌でも調達してくる」
立ち上がりかけた綾子の腕を掴んで、直江は引き止めた。
「例の護符の《気》はお前でなきゃ探れないんだ。この隙に動きがあったらどうする」
「えー、じゃああんたが買ってきて。私ここで見張ってるから」
「………しょうがないな」
なんだかんだいって直江という男は甘い。
昔はこんなに優しくなかったと思うのだが。
二人だけの夜叉衆になって早数年。
今や頼れるのは互いだけだという仲間意識があるからだろうか。
それとも。
(やっぱどんな男も美女には弱いってことかしら)
ふふふ、とひとりで笑いを漏らす綾子の元へ、じきに直江は戻ってきた。
手にした雑誌をはい、と手渡してくる。
「………ちょっとぉ。何よ、『パチスロ万歳』って」
「好きなんだろう?」
「そうだけど、もっとファッション誌とか情報誌とか女性向けのおしゃれなやつがあるでしょ!」
「女性?誰のことだ」
「目の前にいるでしょ!今世紀最大の美女がっ!」
「冗談はよしてくれ」
「……………」
ああ、直江には自分が"美女"どころか"女"であるという認識すらないのだな、と思い知らされた瞬間だった。
□ □ □
待って!待ってってばっ!いかないで……っ!!いや!!かげと───
「晴家!」
直江に揺すられて、綾子はハッと目を覚ました。
顔中が涙と汗でびっしょりだ。
「大丈夫か」
助手席の綾子に、直江は問いかけた。
走っていたはずの車は路肩に停められている。
「………大丈夫じゃない」
厭な夢だった。
景虎が、自分たちを捨ててどこかへ行ってしまう夢。
いや、現状だけをみれば、この夢もあながち間違っていないのかもしれない。
頼りにならない自分たちに見切りをつけた景虎は、二度と戻らないつもりでいるのかもしれない。
それとも、もう絶対に戻ってこれない世界へ、ひとり旅立ってしまったのかもしれない。
再び涙を滲ませる綾子を見て察した直江が、手を伸ばして背中を抱いてくれる。
「大丈夫だ」
「………直江」
「あのひとには、必ずまた会える」
まるで自分に言い聞かせるように言ってゆっくりと背中をさするその手は、励ましてくれているようでもあり、すがりつくようでもあった。
□ □ □
バイクにのっていると、馬に乗っていた頃を思い出す。
景虎も馬が好きで、よく共駆けをしたものだった。
記憶のない現在の景虎も、バイクが好きなのだと直江から聞いている。
馬に乗っていた頃の記憶が、意識下にあるせいだろうか。
松本までの長距離をバイクで行くのは、普通なら辛いものなのだろうが、本当に久しぶりに景虎とともに駆けられるのかと思うと、全く苦に思わなかった。