忍者ブログ 不立悶字(ふりゅうもんじ)

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短編を更新
大変お待たせ致しました~;;
短編「遍路A」を更新しました!
思いつきで一気に書き上げましたが、原作に添えているかどうか><

あとあと、最近誤字やら脱字やらが多くてすみません;;
いや、以前からあったのに私が気付いていないだけかもしれませんが……^^;
反省しております……っ!


ではでは、おまけです~!
つづき
「父兄参観?」
 今度、高耶の妹の中学校で父兄参観があるらしい。
『ほら、高校生になったらさ、あんまそういう機会もないだろ。最後だからさ』
「あなたが行くんですか」
『親父が行く訳ねーし』
「そうですか……」
 高耶の父親は多忙のようだがら、それも仕方がないかもしれない。
「それ、私が行ってもいいんですか?」
『は?』
「まあ、"従兄弟"ですから。構いませんよね?」
 直江がそういうと、
『……マジで言ってんの?』
 受話器の向こうの高耶の不審顔が、目に浮かんだ。


  □ □ □


「おにいちゃん!」
 教室に入るなり、美弥が駆け寄って来た。
「ほんとに来てくれたんだ!」
「約束したろ」
「うん!」
 始業前の教室を見渡すと、やはり最後だからという理由でか、座席の後ろの方には結構な人数の父兄たちが集まっている。
「学校は?さぼって怒られない?」
「ちゃんと、許可貰ってあるからな」
 もちろんそんなものは貰っていなかったが、高耶がいなくたって教師たちは騒ぎもせず、通常通りの授業を行うだろう。
「ほら、席に着け」
「うん」
 美弥が席に戻ると、高耶は教室の隅の方に立った。
 まわりは落ち着いた年齢の大人たちばかりだ。ひとりだけ高校の制服を着た高耶が、正直居心地が悪いな、と感じ始めたその時、教室の扉が開いた。
「よっ」
「お前っ……!」
 入って来たのは、千秋修平だった。
「何しに来たんだよ」
「ほら、"従兄弟"としては、な」
 いったいどこで聞きつけたのかと呆れていると、美弥が千秋に気付いて声をあげる。
「千秋さん!」
「美弥ちゃ~ん」
 千秋が手を振ると、美弥も恥ずかしそうに振り返した。
 そろそろ始業の時間だ。
 高耶は、どうしても扉の方を見て確認してしまう。
(やっぱ……来ないか……)
「なんだ?」
 気付いた千秋が声をかけてきた。
「いや、ちょっと……」
 高耶が言い淀んでいると……、
  ガララララ
 扉が、開かれた。
 長身で、いつものダークスーツ姿で、どうしても人目を引く容姿を持ったお馴染の男が、そこには立っている。
「直江!」
「げ、来やがった」
「すみません、遅くなりました」
 直江はいつもの微笑みで、高耶にそう謝った。
「いや……」
 高耶は感謝の気持ちを伝えたいと思うのだが、なかなか言葉に出来ない。結局、
「もう、始まるぜ」
 それだけ言うと、高耶は前へ向き直った。
 馬鹿なことを言ってしまった……。でも直江なら、きっと自分の気持ちに気付いてくれるはず。ちらりと横に立つ直江を見ると、まるで高耶の心を読んだかのように、無言で頷き返してきた。高耶は慌てて視線を戻す。
 視線の先の美弥も直江が来たことに気付いたらしく声をかけようとするが、始業のチャイムに阻まれてそれは出来なかった。
 けれど、本当に嬉しそうな顔でこちらに笑いかけてきた。


  □ □ □


「一緒には帰れないんですか」
「うん、まだ授業があるから」
「残念だな」
 自分より遥かに背の高い男三人に囲まれて、美弥は嬉しそうにしている。
 その笑顔を見られただけでも、よかったなと千秋は思った。
 不肖の兄を持って苦労しているはずの美弥が、小さな身体でニコニコしている姿を見ると、千秋はどうしても構ってやりたくなってしまう。
「ほら、美弥。次の授業、始まるから」
「うん。今日は本当にありがとうございました」
 美弥は千秋と直江に向かって、頭を下げた。
「いいえ、気になさらないでください」
「そうそう。じゃ、お勉強、がんばって」
 促されるようにして、美弥は友達の輪の中に戻っていく。
 三人が教室を出ようとすると、背後からこんな声が聞こえてきた。
「ねえ、だれだれ?」
「眼鏡のひと、めちゃくちゃいけてんじゃん!」
 その声に、うんうん、と千秋は頷いた。もちろん心の中で。
「スーツの人は?いくつくらい?」
 その友達の問いには美弥が、
「直江さんはダメだよー。お兄ちゃんのものだもん」
 臆面もなく、そう答えた。
「美弥っ!」
 慌てて振り返る高耶に、
「よくわかってんじゃん」
 千秋はそう声をかける。
「笑ってねーで、お前も何とか言えよっ!」
 高耶が赤い顔で直江を責めると、
「私はあなたのものですよ、高耶さん」
 直江は苦笑いでそう言った。
 教室の女子たちの間から、何故か歓声が上がる。
「直江──っ!!」
「さあ、行きましょう」
 高耶は、直江に引きずられるようにして歩きだす。
 そんなふたりを見ながら、
「勝手にやってくれ……」
 千秋はうんざり顔を作った。
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